体内リズムの乱れを招く
「ソーシャル・ジェットラグ」
2006年にティル・ローネベルグ博士が提唱した概念が「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」。体内時計が社会的な時間と合わないことによって生ずる、時差ボケのような状態を指します。体内時計には個人差がありますが、これに対して社会のタイムスケジュールは画一的で、多くの人は仕事や学校など社会に合わせて生活しています。そのため平日には睡眠時間が短縮しがちで、平日の睡眠負債を解消しようとして、週末の朝に朝寝坊(いわゆる寝だめ)をします。 こうした平日と休日で睡眠のタイミングが異なる状況は、週末の夜に数時間の時差がある地域に西向き飛行をして月曜日の朝に戻ってくるようなもの。私たちは日々の生活の中で、海外旅行をしなくても、毎週のように時差ボケ状態をつくりだしている可能性があるのです。

「ソーシャル・ジェットラグ」が
招く様々な悪影響
大塚製薬の調査では、ソーシャル・ジェットラグの時間が長い人ほど、平日・休日を問わず、「起床時に体の疲れが取れない」「起床時の目覚めが悪い」など、睡眠に起因するさまざまな不調・課題感を抱えていることも明らかにされました。
各項目7段階で回答してもらったうち「非常にあてはまる」「かなりあてはまる」と回答した人の割合。ソーシャル・ジェットラグの時間が長いほど、睡眠に関する課題を多く抱えていることがわかりました。

わずか2日の「休日朝寝坊」が
体内時計を狂わせる。
休日明けの月曜日、なんとなく身体が重く、頭もスッキリしないという経験は誰にでも覚えがあるでしょう。「ブルーマンデー」と呼ばれる現象も、平日と週末の就寝・起床時間のズレが原因になっている部分があると考えられます。健康な男女16人を対象に、金曜・土曜日に寝られるだけ寝た場合と、いつも通りに寝た場合を比較すると、わずか2日の休日朝寝坊が体内時計を遅らせてしまうことがわかりました(Taylor, Wright, & Lack, 2008)。また、翌週の眠気度と疲労度においても、寝られるだけ寝た場合の方が高くなる(=悪化する)ことが明らかになっています。
《「休日朝寝坊」の影響》
日曜夜の体内時計が遅れる

健康な人が金曜の夜と土曜の夜に寝ていられるだけ寝て「休日朝寝坊」をした場合の、金曜の夜と2日間寝られるだけ寝たあとの日曜の夜のメラトニン分泌の推移(典型例)。金曜の夜に比べ、日曜の夜はメラトニンが出るのが遅くなり、また分泌量も少なく、寝つきも悪かった。
翌週の前半まで
眠気が強くなる

翌週の前半まで
疲労感が強くなる

睡眠に問題がない男女16人(平均25.7歳)が、金曜日の夜と土曜日の夜に寝ていられるだけ寝て「休日朝寝坊」の状態にした場合といつも通り寝た場合とで、翌週の眠気度と疲労度を比較した。結果、どちらの指標も「休日朝寝坊」した場合の方が強く、特に月曜日と火曜日の数値が高い上、水〜木曜日まで影響してしまうことがわかった。
(Sleep and Biological Rhythms 2008;6:172–9.)
休日に寝だめをする人
=「体内リズム」が乱れている人
休日の朝は遅くまで寝て、「寝だめ」する人は少なくありません。調査によると、女性の39.5%、有職女性に限ってみると49.8%が寝だめをしています。その目的は、「平日の疲れを取るため」だったり、「睡眠不足を補うため」なのですが、実は寝だめこそが体内リズムを崩す原因です。休日に寝だめをする人=体内リズムが乱れている人といえるのです。
休日に寝だめをしている人の割合

平日より休日の起床時間が遅い理由

出典:「現代人の睡眠と目覚めに関する意識調査」