目覚め方改革プロジェクト

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睡眠が体と心を作る

睡眠は最高の
セルフメンテナンス

多くの現代人が、仕事や家事でつい無理をして、簡単に睡眠時間を削ってしまいがちです。しかしその蓄積が心身に大きな悪影響を及ぼしています。私たち人間にとって「睡眠」がいかに大切なのか、重要な役割を解説します。

監修:東京家政大学 人文学部 心理カウンセリング学科 准教授 岡島 義 先生

人間は就寝中に
全身の細胞を修復する

多忙な現代人は、仕事や家事に追われて休息が少なく、一日中フル回転で過ごしています。十分な睡眠時間が確保できなかったり、就寝時間にバラつきがあったりして睡眠の質が下がり、朝の目覚めがスッキリしないという負の連鎖が現れます。

こうした睡眠の状態が続くと、心身は疲弊する一方。慢性的な睡眠不足は、眠気そのものを自覚しにくくして、徐々にパフォーマンスを低下させます。仕事は休まずに来るが、作業効率が低下した状態のことを「プレゼンティズム」といい、睡眠不足は「プレゼンティズム」を高めることが分かっています。ところが現代人は、「ただの寝不足」と睡眠を軽視している人が非常に多いのです。

睡眠の最大の役割は、「心身のメンテナンス」にあり、人間の体は眠りのサイクルに合わせて様々な修復作業を行っています。

睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。眠りにつくと、初めに「ノンレム睡眠」に入り、その後「レム睡眠」に切り替わります。この2つがセットになり、個人差はありますが、入眠から覚醒までおおよそ90分周期で繰り返しながら、心身を整えます。

まず、深い眠りの「ノンレム睡眠」では、脳から「成長ホルモン」が分泌。傷ついた全身の細胞を修復し、疲労を回復させて肌も再生します。また、エネルギーをためたり、免疫機能を高めたりする効果や、記憶を固定する働きがあります。

そして「レム睡眠」は、身体を休養させ、「ノンレム睡眠」と同じく脳内を整理し記憶を固定します。日中の活動で興奮した脳を鎮めてくれる時間です。

このように、「レム睡眠」「ノンレム睡眠」には、それぞれ役割があり、どちらも心身を修復・再生させる重要な役割を担っているのです。

眠っている時間は
脳の掃除にあてられる

 私たち人間の体は、代謝によって生じた老廃物や余分な水分を、体内に流れるリンパにより排出して解毒する働きがあります。こうした体のデトックスは「リンパ系(リンパティックシステム)」が担当する一方、最新の睡眠研究で、脳も「グリンパ系(グリンパティックシステム)」という循環システムが働き、寝ている間にデトックスしていることが分かってきました。

まさに睡眠中は、“脳の掃除時間”。睡眠は、体だけでなく、脳も不要なものを追い出すための休息タイムなのです。

睡眠不足の蓄積が
病気発症の引き金に

ところが、現代人の多くは十分な睡眠をとれていない状況が日々続いています。睡眠不足が重なると、心身のセルフメンテナンスが不十分になり、様々な不調が現れます。

ホルモンバランスや自律神経は乱れ、血圧や血糖値、コレステロール値が上昇。高血圧や糖尿病、高脂血症などの「生活習慣病」も引き起こします。年齢や性別を問わず、日々の睡眠に気をつけないと、こうした病気発症の誘因になるのです。

また、人間は17時間覚醒していると、血中アルコール濃度0.05%と同じくらいのパフォーマンスになるといわれています。これは、ビール1~2本、日本酒1~2合を飲んだ、ほろ酔い程度の集中力ということ。24時間の覚醒では、血中アルコール濃度0.10%で、ビール大瓶1本飲んだ量に相当し、このときと同等程度のパフォーマンスになります。

さらに睡眠不足が続くと、全身に倦怠感が現れ、集中力は著しく低下。私生活だけでなく、仕事も効率や生産性が落ち、常習的に欠勤が続くなど、悪影響を及ぼします。交通事故や産業事故を起こすリスクも高まることから、睡眠不足の蓄積が、最悪の事態にまで発展することを忘れてはいけません。

現代の社会と環境は
「体内リズム」が乱れやすい

このように、睡眠が後回しになる背景には、勤勉な日本人の国民性が大きく関わっているといえます。睡眠時間を犠牲にすることに抵抗が薄れ、無理をしてでも仕事や家事を成し遂げようとする強い責任感もあります。

それに加え、現代人が置かれている社会的立場や環境も関係しています。今の日本は「24時間社会」といわれ、現代人の生活は夜型化。仕事や家事などに追われて就寝が遅くなり、睡眠時間が短くなっています。さらに、平日と休日の睡眠時間やタイミングのズレにより、時差ボケのようになる「ソーシャル・ジェットラグ」を招きます。こうした理由から睡眠リズムが崩れている人が多いのです。

人間の体には本来、日中は活動的に、夜には眠くなるという「体内リズム」というシステムが備わっています。しかし、夜型生活や「ソーシャル・ジェットラグ」で「体内リズム」は乱れ、良質な睡眠をとることが困難になってきています。

睡眠は今後、日本社会全体で考えていかなくてはいけないテーマなのです。「体内リズム」を整えるには、就寝時間と起床時間を一定にしてリズムを整えることが大切。この習慣が、目覚めをスッキリさせて一日を活動的に過ごすための第一歩になります。