意外と知らない体内リズムのこと 目覚めスッキリコラム

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20193月コラム 体内リズムの乱れが女性の「月経」にも大きく影響

3月1日~8日は、「女性の健康週間」です。家事や仕事で忙しく、睡眠時間が少なくなりがちですが、女性の体には「睡眠」が大きく関わっています。今回は、女性にとって身近な「月経」と体内リズムの関係をご紹介します。

明治薬科大学 リベラルアーツ 准教授
駒田 陽子 先生

女性のリズムと体調

女性の心身はライフコース(思春期~成熟期~更年期)の中で、大きく変化します。思春期に初潮が始まり、徐々に女性として成熟し、20~30代に妊娠・出産期を迎えます。40歳を過ぎる頃から女性ホルモンの分泌量は低下し、やがて50歳前後で閉経します。月経、妊娠、出産など、性や生殖に関する健康のことを「リプロダクティブヘルス」と言い、女性がライフコースの変化の中で経験する喜びや悩みに深く関係しています。

さて、月経周期に伴って、ご自身の体調やパフォーマンスが変化することを感じていらっしゃる女性は多いのではないでしょうか。よく聞かれる声としては、月経の1週間前あたりは、昼間に眠気がひどく、だるさを感じる、月経直前になるとイライラしたり、体がむくみやすくなる、月経中は腹痛や頭痛があり、昼間は眠気を感じて体がだるいが夜はよく眠れない、などです。

一方で月経が終了してしばらくは、体も頭もよく動く、やせやすい、体調がよい、という実感をお持ちの方も多いようです。日本人女性約2万人を対象とした調査によりますと、およそ7割の方が月経前や月経中に心身の不調を感じています1。特に、月経中の痛みは半数の女性が、また過多月経は5人に1人が悩んでいます。ところが、こうした月経に伴う症状に対しては、「我慢する」、「横になる」などの消極的な対処が中心で、普段の生活や仕事に支障が出ることも少なくありません。

月経周期に関してはどうでしょうか。正常な月経周期は、周期が25~38日で、周期のぶれが7日未満とされますが、私たちの研究では、半年を通してこの基準を満たしていた人はわずか40%でした。月経周期が乱れる原因でよく挙げられるものとして、無理なダイエットやストレス、不規則な生活があります。また、妊活中の方は、ストレスをためないでリラックスして過ごす、規則正しい生活をするといったことを心がけていらっしゃるかもしれません。このように、私たちは経験的に、ふだんの生活習慣が「リプロダクティブヘルス」に影響することを知っています。

このコラムでは、体内時計や体内リズムの観点から、「リプロダクティブヘルス」について考えてみたいと思います。

女性のリズムと体調

体内時計と
「リプロダクティブヘルス」

私たちの体には、体内時計が備わっており、約1日のリズム(サーカディアンリズム)を刻んでいます。サーカディアンリズムに従って、私たち人間は夜に眠り、朝に目覚め、日中に活動します。睡眠と覚醒以外にも様々な生理現象が約1日のリズムを示します。

たとえば、血圧や体温が最も高くなるのは午後4時頃、血中コレステロール値がもっとも高くなるのは午後1時頃です。また、自然分娩が開始するのは午前0時頃、自然出産の確率が最大になるのは午前6時頃です。人の誕生にも体内リズムが関係しているとは、なんだか神秘的ですね。体内時計が正確に動くからこそ、私たちの体は健康を保つことができます。

体内時計が大きく乱れる例として、シフトワークや海外旅行があります。夜勤中は睡眠をとらずに働かなくてはなりませんし、海外旅行に行きますと、現地は夜なのに自分の体は昼間のために眠れないといった状況が起こります。シフトワークに従事する看護師や、時差のある地域を移動する客室乗務員では、月経周期異常や早期流産のリスクが高いことが以前から指摘されていました。これは、シフトワークや時差による体内時計の乱れが、様々なホルモンの分泌異常を引き起こし、女性の健康に影響を及ぼすものと考えられます。

体内時計と「リプロダクティブヘルス」

ソーシャルジェットラグによる
「リプロダクティブヘルス」への影響

実は、シフトワークのように大幅に体内時計が乱れる場合だけでなく、1~2時間程度のズレであっても、女性の体に様々な影響をもたらす可能性があることが明らかにされつつあります。コラム3でソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)について説明しましたが、私たちの研究では、平日と休日で睡眠時間帯のズレが1時間以上の女性は、ズレが1時間未満の女性に比べて、月経中の痛みやむくみといった月経症状を重く感じていました2

また、ソーシャルジェットラグをシミュレートした動物実験も行われています3。マウスを飼育する際に、飼育環境の明暗周期を一週間のうち2日だけ3時間遅らせてみます。このようなソーシャルジェットラグ条件下では、マウス(中年期)の性周期が乱れてしまったそうです。

こうした研究結果は、シフトワークや海外渡航と比較するとそれほど大きい変動でなくとも、日常的な体内時計の乱れが月経や妊孕性(にんようせい・妊娠する力)に影響する可能性を示唆しています。

月経中の症状に対して「我慢する」、「横になる」といった消極的な対処をとることが多いのですが、ふだんの生活を見直してみることも役に立ちそうです。お休みの日も含めて規則正しい生活をすることで、月経周期の乱れを防ぎ、月経中の症状を軽くすることにつながるでしょう。

引用文献
1. Tanaka et al., Int J Womens Health 2013
2. Komada et al., Chronobiol Int 2019
3. Takasu et al., Cell Rep 2015

ソーシャルジェットラグによる「リプロダクティブヘルス」への影響
駒田 陽子
駒田 陽子(こまだ・ようこ)
明治薬科大学 リベラルアーツ 准教授

早稲田大学 文学部 心理学専修 卒業。早稲田大学大学院 人間科学研究科 博士課程修了・人間科学博士。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所特別研究員、東京医科大学 睡眠学講座 准教授 などを経て、2017年より現職。

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